I.眼底出血・黄斑浮腫(糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症など)
II.網膜裂孔
Ⅲ.網膜格子状変性・網膜円孔
糖尿病・網膜静脈閉塞・加齢黄斑変性症などがあるときに行います。
レーザー治療をせず放置した場合
眼底出血で網膜の血管がダメージを受ける→網膜の血流が悪くなる→網膜が酸素欠乏状態になる→網膜が酸素を必要とし、新生血管ができる※新生血管はもろく、破れやすい病的な血管です
→パターン①新生血管が破れる→①硝子体出血になる
→パターン②新生血管が隅角という目の水の流れの出口にできる→目の中の水の流れが悪くなる→眼圧があがる→目の神経がダメージを受ける→視力が低下したり、視野が狭くなったりします(血管新生緑内障)
レーザー治療の目的
病気の進行を止めるためです。視力が改善したり、病気をなかったりすることはできません。
そのため、ご本人では治療したという自覚は感じません。
レーザーを網膜の血流が悪い部分に当てる→網膜の細胞が死滅する→網膜が酸素を必要としなくなる→新生血管ができなくなる。すでに新生血管がある場合には新生血管が小さくなる。→上記の硝子体出血と血管新生緑内障になる可能性を防ぐことができる
治療による合併症
レーザーで網膜の細胞を死滅させる→死滅した網膜の機能がなくなる→視力の低下や視界が狭く感じる。ものが暗くみえる場合もあります。
ただし、治療をしない場合に比べたときの視力の低下を抑えることができます。
治療の方法
瞳孔を広げる必要がありますので、治療開始までに30-40分程度、準備の時間が必要になります。
麻酔の目薬をしたあとにレーザー用のコンタクトレンズをつけて行います。 多少の痛みを伴う場合がありますが、10 分から15 分程度で 1 回の治療は終わり ます。網膜全体に行う場合は症状に応じて、日を空けて通常数回程度(3-5回)に分けて 治療します。また必要に応じてレーザーを追加する場合があります。レーザー直後は暗く感じて見えにくくなることがありますが、普通は15分程で戻ってきます。当日は特に安静の必要はなく日常生活に制限はありません。
治療の費用
片目の治療で病気によりますが、3割負担の方で3万5千円か5万円程度かかります。高額の医療になりますので、確定申告をすれば、所得などにより還付される場合もあります。領収書は保管しておいてください。手術治療になりますので、民間の医療保険に加入の方は給付金が出る場合があります。
網膜裂孔(もうまくれっこう)とは、眼の奥の網膜というところが一部破れている病気です。網膜裂孔を放置すると、網膜剥離になることがあります。網膜剥離は、適切に治療しないと失明する可能性がある怖い病気です。そのために、レーザー治療を行います。
治療は、網膜裂孔の周囲をレーザーで固めていきます(下図)。
〔1〕治療の目的:網膜剥離を防ぐこと
〔2〕治療による副作用:一時的な炎症・視力の低下。レーザーの効果が出る前に、網膜剥離になってしまう方もいます。
〔3〕治療にかかる費用:3割負担の方で検査費も含め、4‐6万円程度、1割負担の方で1-2万円程度です。(網膜の状態により費用が異なります。)手術治療になるので、生命保険に加入されている方は、給付金が出ることがあります。治療の効果は、ご本人では自覚することはできなく、治療費が高いと感じるかもしれません。しかし、網膜剥離になると、入院・手術治療が必要になりますので、費用はさらにかかることになります。
原因)硝子体剥離が原因です。硝子体剥離とは、生まれたときは網膜についている硝子体が急激に収縮をして、網膜から離れる現象のことを言います。40代から60代程度に起きる、いわゆる加齢性の変化です。近眼が強い方は、さらに若い年齢で起こることがあります。セロファンテープを紙からはがすことを思い浮かべてみてください、紙が薄かったり、テープと紙のくっつきが強かったりすると紙が破けると思います。テープをはがすのが硝子体剥離で、紙が破けるのが網膜裂孔です
治療後の注意点)レーザー治療の効果が出るのに、1-2週間程度かかります。それまでは、激しい運動は控えてください。硝子体剥離が進行すると、他の網膜の場所にも網膜裂孔が生じる可能性があります。その時は、追加でレーザー治療をします。視界が狭くなったり、みえづらくなったりしたときは網膜剥離などになっている可能性があります。その時は、急いで来院してください。また、飛蚊症(ひぶんしょう)といって、虫が飛んでいるなどの症状を、この治療ではなくすことはできません。
網膜が一部破けるのが網膜裂孔です。
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網膜裂孔を放置すると、網膜剥離になります。この状態になると、入院・手術が必要になります。
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白い斑点がレーザー光線を当てた場所です。真ん中にあるのが、網膜裂孔です(白印)
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網膜格子状変性とは
目の奥の網膜が一部薄くなっている部分のことを言います(写真1)。小児期から青年期に徐々に形成されます。全人口の5-6%くらいで、その約半数が両目に発生すると言われます。近視があるとなりやすいです。
その部分がどんどん薄くなり、最終的に穴が開いてしまう場合もあります。これを網膜円孔と言います。
網膜格子状変性の症状:自覚症状はないことが多く、眼底検査で偶然に発見されることが多いです。
網膜格子状変性の経過:網膜剥離の原因になります。格子状変性がある方の5%弱が網膜剥離になると言われています。網膜剥離の50-60%は網膜格子状変性が原因です。2つメカニズムがあります。
①
網膜円孔から、目の中にある硝子体の液が徐々に網膜下に入り込みます。20-30歳代に網膜剥離になることが多いです。
②
網膜格子状変性が硝子体剥離という40-60歳代に起こる変化にて突然裂けてしまうことがあります。網膜裂孔といい、この裂孔から硝子体液が急速に網膜下に入り込みます。
網膜裂孔はレーザーで治療できます。網膜剥離になると入院・手術加療が必要になります。飛蚊症(虫が飛んでみる)が増えた・光視症(ぴかぴか光を感じる)症状があると、網膜裂孔・網膜剥離になっている可能性がありますので、急いで受診をするようにしてください。網膜剥離の後遺症として、視力低下・視野障害、ゆがんでみえることが残ることがあります。
網膜格子状変性の治療:レーザー治療(正式名称:網膜光凝固術)
レーザー光線を網膜格子状変性の周囲に当てます(写真2)。レーザー治療により、硝子体液が網膜下に入っても、網膜剥離が広がらないようにします。治療時間は、格子状変性の範囲によりますが、5-10分程度です。費用が3割負担で30,000円強くらいかかります。手術治療になりますので、民間の医療保険から給付金がでることがあります。格子状変性は網膜剥離の発症に関与はしますが、頻度は少ないので経過観察することもあります。レーザー治療をしたほうが良い場合は、網膜円孔がある、アトピー性皮膚炎がある、近視が強い、反対眼が網膜剥離なった場合です。
レーザー治療の副作用:
①痛み:徐々に治ります。
②レーザー治療した部分の視機能が低下:目にやけどを作る治療になるので、レーザーを当てたところは暗く感じたり、視界が狭く感じたりするかもしれません。場合により、視力が低下することもあります。
写真1)網膜格子状変性と網膜円孔(黒丸の部分が網膜格子状変性、赤い丸が網膜円孔です)
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写真2)格子状変性の周りにレーザー治療した後です。白い粒粒がレーザーの痕です。
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緑内障とは眼圧の上昇によって眼の神経がダメージを受け、視野が狭くなる病気です。
眼圧は、眼を栄養する水(房水:ぼうすい)が産生され、隅角から目の外に流出することで保たれています。
そのバランスが崩れると眼圧が上昇し、緑内障をひきおこす原因となります。
隅角光凝固術は、SLTレーザー(Selective Laser Trabeculoplasty : SLT)を、隅角の線維柱帯(せんいちゅうたい)に当てることで、房水の流れを通過しやすくなることで眼圧を下げる治療です
治療時間:5‐10分程度です。痛みは殆どありません。SLT治療を受けた患者さんは、治療後も普段と変わらない生活ができます。
治療効果:一般的には眼圧を20-30%程度下げます。眼圧が下がる方は60-80%の方です(点眼治療で眼圧が下がる方は約80%です)。6か月位で効果がなくなることがあります。その場合は、再度SLT治療を行います。場合により炎症が出たり、眼圧が一時的に高くなったりすることがあります。
SLT治療をおすすめする方
〔1〕眼圧が高い方
〔2〕緑内障の点眼による副作用で困っている方(まぶたの黒ずみなど)
〔3〕点眼を使っても眼圧が下がらない方
〔4〕複数の点眼治療が困難な方
〔5〕点眼を忘れることが多い方、点眼をするのがつらい方
〔6〕緑内障の視野障害が進んでいる方
費用:片眼につき1割負担で1万円弱、3割負担で3万円弱になります。手術治療になるため、生命保険で給付金がでることがあります。正式名称は、隅角光凝固術(ぐうかくひかりぎょうこじゅつ)です。
後発白内障(こうはつはくないしょう)とは、白内障手術を行った人に発生する白内障です。白内障手術後の数ヶ月から数年かけて発症します。手術後5年の間に、約5人に1人が発症すると考えられています。白内障になる水晶体は水晶体嚢と言う透明な殻に包まれた細胞の塊で、白内障になるとこの細胞の塊が混濁します。実際の手術では水晶体嚢(殻)に穴を開けて、中の濁った細胞の塊だけ摘出します。その後、水晶体嚢の中に人工レンズを入れて手術を終わりにするのですが、手術後には水晶体嚢の中に少数の細胞が残ります。この残った細胞が、また増えて濁ってくることを後発白内障と言います。軽い濁りでは、見え方に影響しないので治療の必要はありませんが、濁りが強くなると、かすみ・視力の低下など見え方が悪くなってしまいます。
白内障手術直後の状態です。
透明なレンズです。 |
小粒状が後発白内障です。
これにより視力が低下します。 |
レーザー治療後です。
小粒状の濁りが消え、よく見えるようになります。 |
治療:レーザー後嚢(こうのう)切開術(正式名称:後発白内障手術)
レーザーで水晶体嚢の後ろ側の見え方に関係する部分だけ穴を開ける治療です。このレーザー治療は痛みも無く短時間ですみますので、通常入院の必要はありません。(程度の強い場合は入院して手術を行うことがあります。)また、治療効果も良く、治療翌日より改善することがほとんどです。ただし、他に眼の病気がある人は改善効果が少ない場合があります。
また、レーザーで後嚢を切開すると切開した破片が眼の中に散らばるので、治療後しばらくの間ごみが飛んでいるように見える(飛蚊症)ことがあります。まれに治療後、眼圧が上昇して緑内障になることや網膜剥離という怖い合併症を起こすことがあります。そのため、7-14日後に再び受診していただきます。
1度レーザーで後嚢切開を行うと再度混濁が進行することは少なく、通常治療は1回で済みます。治療時間は5分程度で、治療後は特に生活の制限はありません。
費用)片目で健康保険1割負担の方で約1400円、2割負担で約3000円、3割負担の方で約4000円です。これに検査費用がかかります。
日本白内障学会(http://www.jscr.net/)を参照し、作成致しました。