当院では、日帰り白内障手術を行っております。最新の手術器械を用い、安全性を重視に考えた手術を行っております。
1.白内障とは | 2.白内障手術を受ける時期 |
3.白内障の手術方法 | 4.白内障手術による合併症 |
5.白内障手術後の気になる症状 | 6.白内障手術後の注意点 |
7.白内障の手術費用 | 8.まとめ |
9.眼内レンズの度数決定法について |
白内障は、眼の中の水晶体が混濁する病気です。そのために、視力の低下・ものがかすんで見えるなどの症状が出てきます。点眼薬・内服薬による治療もありますが、白内障の進行を抑制するのみで、白内障を消すことはできません。現在では、今より眼を良くするためには手術治療しかありません。
■白内障を手術しない場合 白内障は急激に失明する病気ではありません。そのため、手術治療は我々が強制するものではありません。手術治療に抵抗がある方は、手術をしない選択肢もあります。しかし、白内障は、年齢とともに進行し、徐々に視力は低下することが多いです。また、進行した白内障は、手術の難易度が増し、後述する合併症の頻度がさらに高くなります。 |
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白内障を放置すると、左図から右図のように白内障が進行します。右図のようになると、手術が難しくなります。 |
白内障手術を受ける時期は、ご本人が日常生活に不自由して見え方をよりよくしたい時と考えております。他には、運転免許の更新ができないなどの時です。手術をしなければ失明する病気ではないので、我々から強制する手術ではありません。
ただし、以下の場合は、早めの手術を受けることをお勧めしております。
〔1〕緑内障発作を起こしやすい目の方
〔2〕白内障手術が難しい目をされている方:瞳孔の開きが小さい・落屑(らくせつ:水晶体の表面にたまるふけ)がある方など
〔3〕片目の視力が不良の方
〔1〕麻酔 | :点眼薬による麻酔で行います。 |
〔2〕切開 | :角膜(黒目)と強膜(白目)の境目を2.5mm程度切開します。 |
〔3〕前嚢(ぜんのう)切開 | :水晶体の前の袋を円形に切開します。 |
〔4〕水晶体除去 | :超音波にて水晶体の中身を小さく砕き、砕いた破片を吸引します。 |
〔5〕眼内レンズ挿入 | :水晶体を除去しただけでは、まだピントが合わない状態です。ピントを合わせるために、眼内レンズ(半径6mm程度のプラスチックのレンズ)を折りたたんで、水晶体があった位置に挿入します。眼の中でレンズを開いて、水晶体の袋の中に収めていきます。 |
〔6〕閉創 | :切開した部分を閉じていきます。 |
手術時間は10~15分前後です。手術というと大げさに聞こえるかもしれませんが、時間としては虫歯の治療と同じくらいです。ただし、眼の組織が弱い方、白内障が進行している方は、1時間程度時間がかかることがあります。
手術後は、白内障による濁りが除去されて、透明な眼内レンズになり、再び眼の中に光がよく通るようになります。そのため、視力が回復したり、ものがきれいにみえたりと自覚症状の改善が見込めます。ただし、緑内障・糖尿病網膜症など白内障以外の眼の病気がある方は、視力がどこまで回復するかは不明です。手術による成功率は90%程度と非常に安全な手術になっています。手術後「よく見えるようになった。」など多くの方に、満足していただいております。「顔のしみ・しわがこんなにあったとは知らなかった。」「家のほこりが見えるようになり、掃除を頻繁にするようになった。」など、我々が返答に困るようなコメントをされる方もいらっしゃいます。
▲白内障の手術光景です。顕微鏡を使った、ミリ単位の非常に細かい手術になります。突然顔を動かすと、大変危険です。何かあれば声で教えてください。手術中、お話することは構いません。
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▲透明な眼内レンズになることで、光が眼によく通ることにより、視力の改善などが見込まれます。
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目の中に入れる眼内レンズです。 |
白内障は、現在の医学では、安全な手術になってきております。しかし、以下のような合併症を生じる可能性があります。
眼のなかに細菌が侵入し、うみがたまってしまう状態です。頻度としては2,000人に1人とまれではありますが、眼内炎になると緊急手術が必要になったり、視力が手術前より低下したりする人もいます。眼内炎にならないように、手術前後で抗生物質の点眼薬を使用します。点眼薬は、我々が申し上げる回数を欠かさず点眼するようにして下さい。 |
▲目がとても充血し、目の中にうみがたまっています(白矢印)。(昭和大学より)
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眼のなかに大量出血してしまうことです。こちらもまれですが、起きてしまうと、手術前よりも視力が低下してしまいます。
眼の組織が弱い方は、ピントを合わせる眼内レンズが挿入できないことがあります。このときは、コンタクトレンズを使用し、視力を矯正していきます。あるいは、眼内レンズ縫着(ほうちゃく)術といって、眼の中にレンズを縫い合わせ、固定する手術をうけていただくこともあります。
当院で使用している眼内レンズは単焦点レンズといい、ピントを一箇所にしかあわせることができません。例えば、遠くにピントを合わせるレンズを挿入した時は、遠くは見えますが、近く(例えば細かい文字など)にはピントが合わなくなり、近くは良く見えません。反対に、近くにピントをあわせた時は、遠くが良く見えません。そのために、メガネが必要になります。手術後、レンズの度数が安定するのに1~2ヶ月かかりますので、メガネを作る時期は、手術後1~2ヶ月程度と考えておいて下さい。また、現在では多焦点レンズといい、ピントを遠くと近くに合わせられるような遠近両用レンズもあります。ただし、当院では、多焦点レンズを扱っていないため、ご希望の方は、他の病院を紹介させて頂いております。 白内障手術は、裸眼視力(らがんしりょく:メガネをかけない視力)を向上させることが目的ではありません。 |
▲ご友人の中には必要ないとおっしゃる方もいるかもしれませんが、理論的には手術後メガネは必要です。
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眼内レンズは、角膜曲率半径(角膜のカーブ)と眼軸長(眼の長さ)にて、コンピューターで計算して、挿入するレンズの度数を決めています。そのために、ずれが生じることがあります。これは、遠くにピントを合わせるようなレンズを選択した場合においても、遠くは良く見えなく近くにピントが合ってしまうことです。ずれが生じたときは、メガネにて視力を矯正していきます。ごくまれに眼内レンズを交換する手術をすることもあります。
手術する水晶体と角膜(黒目)はとても近い位置にあります。そのために手術後、角膜の細胞が減り、水疱性角膜症(すいほうせいかくまくしょう)といって、角膜が濁ってしまうことがあります。その場合は、角膜移植などが必要になります。手術前に角膜の細胞数をチェックします。角膜の細胞が少ない時は、大学病院での手術を勧めています。
手術の数カ月から数年後に眼内レンズの周囲が濁ることです。白内障手術後の20~30%の方に起こるとされています。ほとんどの後発白内障は、外来でレーザー治療にて治すことができます。
手術による緊張、麻酔薬あるいは抗生物質などのアレルギーにて血圧が下がってしまったりすることです。起きたときは、迅速に治療して対応します。
人によっては、視力が回復するのに時間がかかる方もいらっしゃいます。
また、手術が予定通り成功としたとしても、満足いただけない方も中にはいらっしゃいます。
(眼の充血、違和感、まぶしく感じる、暗いところで光がにじむ、糸くずが飛んで見える)
眼が赤いのは、眼の表面の出血であることがほとんどです。徐々に良くなることがほとんどです。目やに・痛みを伴うような赤みは、眼内炎の可能性もあるので早めに受診して下さい。
手術により眼に侵襲を与えているために、手術後はしばらく眼がゴロゴロするなどの異物感が残ります。徐々に良くなることがほとんどです。ドライアイ・糖尿病など病気がある方は角膜(くろめ)に傷が出ることがあり、異物感が消えるのに時間がかかることがあります。
眼内レンズはアクリル樹脂でできていますが、人間のもとの水晶体と違い、眼内レンズの光学的な性質上、光の入り方、明るさなどの条件によって、グレア(まぶしくギラギラする)やハロー(周囲の光輪、にじみ)などを生じることがあります。夜間、対向車のヘッドライトがまぶしく感じるのもこれらの影響です。白内障で濁った水晶体から、透明な眼内レンズでの見え方となるので手術後しばらく気になる方が多いようですが、しばらくするとあまり気にならなくなる方がほとんどです。
いわゆる飛蚊症(ひぶんしょう)です。飛蚊症の原因は、眼のなかにある硝子体といわれるゼリーの濁りが原因です。手術にて、水晶体の濁りをきれいに除去しても硝子体の部分は以前のままのため、飛蚊症は白内障手術によって改善するものではありません。むしろ、今まで白内障による霞みで気にならなかった飛蚊症が、手術後にかえって気になることすらあります。飛蚊症は、手術の結果とは関係ありません。個人差はありますが、生理的な飛蚊症の症状は時間とともに気にならなくなってきます。
白内障手術にて、今お困りの眼の問題がすべて解決する訳ではありません。
白内障手術後、1週間程度は洗髪・洗顔ができません。首から下は、普通に入浴やシャワーは可能です。洗髪をしたい場合は、美容院・床屋で眼に水が入らないように、洗ってもらって下さい。
■家事 | :手術の翌日からしていただいて構いません。 |
■運動 | :散歩など軽い運動は手術翌日からして構いません。ジョギング・体操・球技など汗をかくような運動は、手術後2~3週間は控えてください。プールは、最低1ヶ月は控えてください。水泳をする時は、必ず我々の許可をとってからにして下さい。プールは、きれいな水ではないので、細菌が眼の中に入って、眼内炎を起こすことがあるからです。 |
■外出 | :買い物など手術の翌日からして構いません。旅行は、手術後2~3週間は控えてください。温泉に入る時は、眼に水が入らないようにして下さい。これも、眼内炎の原因になるためです。 |
■食事 | :特に制限はありません。飲酒は、可能であれば、術後1週間は控えてください。飲酒により、眼の炎症が強くなることがあるからです。酔っ払って、転んだりぶつけたりしないように気をつけて下さい。 |
■運転 | :手術後1週間程度は控えてください。 |
■点眼薬による治療 | :手術後、3ヶ月前後は点眼薬を使用します。徐々に点眼薬の本数、回数は減らしていきます。 |
白内障手術後の保護メガネです。 |
手術当日は、手術料・手術時に使用する薬剤料などにより、1割負担の方で約1万5千円、3割負担の方で約4万5千円程度です。
皆様それぞれの治療の内容により、前後することがありますので、ご了承下さい。
生命保険に加入されている方は給付金が出ることがありますので、当院まで書類をお持ちください。
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白内障の手術は短時間で安全にできるようになってきました。 |
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予期せぬ事態で視力が低下してしまうこともあります。 |
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今お困りの眼の問題がすべて解決する訳ではありません。 |
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手術で目に侵襲を与えるために、異物感などが残る方もいます。 |
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眼内レンズもメガネと同様にいろいろな度数があります。目に入れる度数により、遠くを見やすくしたり、近くを見やすくしたり、近視を治したりすることができます。
眼内レンズの度数の合わせ方は、大きくわけて以下の4つに分けられます。どの距離に焦点を合わせるかで、手術後の満足度がかわります。当院で使用しているのは単焦点眼内レンズなので、ある焦点に関してはめがねなしではっきりみえますが、基本的には手術後もめがねは必要になります。度数の決定法についてある程度の目安を示します。裸眼視力に関しては乱視なども関係しますのである程度の目安と考えてください。
お勧めする人:昔は遠くがよくみえていた人、運転する人、近視でコンタクトレンズを装用していて手術後もめがねやコンタクトレンズなしで遠くが見えたい人。
※近くをみるときは老眼鏡が必要になります。
お勧めする人:運転せず、家の中でめがねをあまりかけたくない人。音楽をされている方で楽譜・楽器をみえるようにしたい人。外出したり本を読んだりあまりしない人。
※遠くも近くもある程度はみえます。よりくっきりみえるようにするためにはめがねが必要です。
お勧めする人:昔から近視があり、コンタクトレンズを装用していない方で、読書や細かい作業をする人。
※若い時は遠くが見えていた方で、近くがみえるレンズをご希望される方がいらっしゃいます。近くに焦点を合わせるレンズを挿入すると、遠くが見えなくなってしまうので、若い時に近視がない方にはあまりお勧めはしません。
※遠くを見るときはめがねが必要になります。
お勧めする人:昔から不同視(モノビジョン:片目で遠くがみえ、片目で近くがみえている)の人
※新聞などのメディアでは、この方法をお勧めする医師がいらっしゃいますが、私としてはあまりお勧めしません。確かに、遠くも近くも理論的には見やすくはなりますが、人間は普段、両目を開けて見ているために、慣れの問題がとてもあります。また、立体感覚が両目とも同じ度数の場合に比べ落ちる場合があります。手術前から長い間、モノビジョンで過ごしていた方はすでに脳が慣れているためにこの方法をお勧めすることがあります。
★目に挿入する眼内レンズの度数は最終的には医師とご本人と相談の上、ご希望を聞いたうえで、最終決定していきます。